一般家庭では「印刷」と「プリント」、「印刷機」と「コピー機」はほぼ同じ物として認識されていますが、実は両者には印刷の構造や仕組みに違いがあります。
そのため、印刷業界では「印刷」と「プリント」、「印刷機」と「コピー機」は明確に区別され、依頼主の要望やニーズに合わせて使い分けられています。
印刷とプリントではコストとスピードに違いがある
印刷業界では印刷機を使用したものを「印刷」、プリンターを使用したものを「プリント」と呼んでいます。
印刷機とプリンターはデータ入力から印刷物ができあがるまでの過程で発生する時間とコストに大きな違いがあります。
大量生産に適した印刷
印刷とは、パソコンから送られた印刷データを印刷機の内部で分析・処理し、版にデータを焼き付けて印刷する方法の事で、オフセット印刷とも呼ばれます。
版画と同じ要領で、版についているインキを一旦ブランケットと呼ばれる転写ローラーに移してから、印刷用紙に転写していく仕組みになっています。
はじめに製版しなければいけないので手間がかかりますが、一度作成してしまえば版が壊れるまで何度でも印刷できるため、同じ印刷を大量に作り出す時に向いています。
プリントは少量の印刷物を作るのに最適
プリントとは、レーザープリンターまたはインクジェットプリンターなどを使用し、パソコンから送られたデータを直接紙に出力する方法の事です。
製版いらずですぐに印刷できる事から、「必要な物を必要な時に、必要な分だけ」という意味を持つオンデマンド印刷とも呼ばれています。
データ出力から印刷まで短時間で行う事ができるので小ロットの印刷に適しています。
なお、企業ではスピーディに印刷できるレーザープリンターのシェア率が高めですが、ひんぱんかつ大量にプリントする機会が少ない家庭では、色の再現度が高いインクジェットプリンターの方が人気で、全体の85%以上と圧倒的多数を占めています。[注1]
仕上がりの良さと大量生産なら印刷・スピード重視で小ロットならプリントがおすすめ
印刷ではパソコンから送られたデータを細かく分析し、印刷に適したデータに処理してくれるので、高い再現度を誇っています。
実際、オフセット印刷とオンデマンド印刷を比較した実験では、前者の方が一部紙類を除いて高い相関を得られた事が報告されています。[注2]
また、一度製版すれば繰り返し使えるので、印刷すればするほどコストの節約につながります。
一方、プリントは製版の過程を省略してすぐプリントアウトできるので、短期間で印刷物を作れるのがポイント。
ただし、一枚あたりのコストは印刷に比べて割高なので、小ロットの印刷物を手早く作りたい時に利用するのがおすすめです。
[注1] 電子写真とオフセット印刷における印刷物表面形状の解析[PDF]
http://www.enomae.com/publish/pdf/kitano1.pdf
[注2]マイボイスコム株式会社「家庭用プリンターの利用(第3回)」
http://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/16206/index.html
印刷機とコピー機はコストや印刷スピードに加えて仕上がりが異なる
印刷機とコピー機は「印刷物を大量に作る」という点で共通していますが、印刷までの過程やランニングコスト、仕上がりにはそれぞれ違いがあります。
コスト・スピードに優れた印刷機
印刷機は初回に版を作るのでやや時間がかかりますが、一度印刷が始まると高速で複製を作り出していくので大量コピーに適しています。
コストについても製版の値段はやや割高ですが、1枚当たりのコピー費用は安価で済むのが特徴です。
カラー性能と耐水性に長けたコピー機
コピー機は一枚あたりのスピードこそ印刷機に劣るものの、製版しないぶん、すぐにコピーを始める事ができます。
文書のコピーにはもちろん、カラー性能にも優れており、写真印刷にも活用できます。
また、レーザープリンターなのでインクよりもにじみにくく、水に強いのも特徴です。
大量生産には印刷機、写真印刷ならコピー機を使うのがベスト
文書のみの資料などを大量に作りたい場合は、スピードが速く、コストも安い印刷機の利用がおすすめ。一方、写真印刷などカラー印刷をしたい場合はコピー機を使った方がきれいに仕上がります。
印刷とプリント、印刷機とコピー機の違いを知って用途に合った印刷をしよう
印刷とプリント、印刷機とコピー機はそれぞれ似て非なる物で、ランニングコストや仕上がりの美しさ、印刷スピードに大きな差があります。
同じ文書を大量に作りたい場合は、印刷機を使用した印刷の方がコストと生産性のバランスも良く、非常に効率的です。
一方、少量の印刷ならプリントやコピー機を活用するのがベスト。コピー機はカラー印刷にも対応しているので、写真印刷も行えます。
一般家庭では混同されがちですが、印刷会社などに依頼する時は自分の目的に適した印刷方法を選ぶようにしましょう。