画像には透明効果などの複雑な処理が求められることもありますが、この場合に使われる技法としてオーバープリントがあります。
ただし、オーバープリントは利用方法を理解していないと思うような効果を得にくいです。
この記事ではオーバープリントの利用目的と注意点について解説していきます。
オーバープリントとは?別名ノセ色を重ねて印刷すること
オーバープリントとは、「他の版に対して色を重ねて印刷する」ことで、別名「ノセ(スミノセ)」とも呼ばれています。
オーバープリントを設定している場合、前面にある色と背面にある色とが混じって印刷されます。
そのため重なり合っている部分の色が変化したり、対象が文字である場合は消えてしまうこともあります。
オーバープリントはなんのためにするの?
オーバープリントは「見当ズレ」を避けるために行う技法です。
スミノセ処理が必要となる場合にも有効で、例えば墨文字などの色を全ての版上に載せたい場合にはオーバープリントを設定します。
例えば、色が濃い背面の版の上に墨文字を載せる場合、オーバープリントを設定しないと背面の色と文字の間に白い隙間ができる(見当ズレ)ことがあります。
こういった場合、オーバープリントを設定することで見当ズレを避けることができます。
なおオーバープリントを設定していない場合でも、上下の版の位置が完全に一致していれば見当ズレは発生しません。
ただし実際の印刷では1mm以下の紙のズレや伸びが発生する可能性が高く、どうしても隙間ができてしまいます。
オーバープリントする際の注意点
オーバープリント処理は見当ズレを防ぐために有効な手段です。
特に注意したいのは使用する色で、場合によっては意図しない状態で仕上がってしまうこともあります。
以下に白や黒をオーバープリントにする際に知っておきたい点をまとめます。
黒をオーバープリントする場合
黒をオーバープリントに適応させる場合、その黒色の範囲が大きいと背面の版の色によっては黒色に段差ができることがあります。
例えば、人物イラストの頭部(髪の毛など)にオーバープリントを適応させると、頭部や背景が透けて見えてしまうこともあります。
また、白フチ文字の上に墨文字を重ねることで背景の白フチ文字の塗り設定が透けて見えたり、画像の上にスミベタのボックスを重ねることで背景が透けて見えることもあります。
白に対してオーバープリントする場合
白をオーバープリントに適応させる場合、背面の版の色と完全に同化してしまうため全く見えなくなります。
一般的な印刷物では紙の色は白であるため、オーバープリントの対象となっている版は消えてしまうのです。
オーバープリントと乗算は同じ?
「オーバープリント」と透明効果の「乗算」はどちらも同じ様な結果を得ることができる技法ですが、処理的には全く異なり結果も違う場合があります。
結論から言うと、オーバープリントと乗算は同じではありません。
オーバープリントとは印刷用のインクの性質を利用した技法になります。一方、乗算とはデジタル技術を利用した技法です。
オーバープリントは他の版に色を重ねる(載せる)技法で、背面と前面の版を重ねた時、前面の版の色だけが反映されます。
なお、前面と背面の色が同じ場合は色の変化は起きません。
乗算は重なった版同士の色を掛け合わせる技法で、背面と前面の版を重ねた時に見られる色は背面と前面の版の色の混合色となります。
イメージとしては色の上に透明なセロファンを重ねている感じで、前面と背面が同色であれば重なった部分は同色のより濃い(暗い)色になります。
なお掛け合わせの色が黒であれば結果色は常に黒となり、白の場合は反映されません。
まとめ:オーバープリントを使いこなそう!
今回はオーバープリントの利用目的と注意点についてご説明しました。
オーバープリントは色と色を重ねて印刷する技法です。
例えば墨文字などを全ての版に載せる場合、オーバープリント設定すれば可能となります。
ただし見当ズレが発生してしまうことも知っておいてください。
またオーバープリントを設定する対象物とその背面の版の色によっては、対象物が印刷されない(見えなくなる)こともあるので使い方に注意する必要があります。
自分が意図するような印刷物にするためにも、色についての注意点を理解しておくと失敗も少なくなるはずです。