同じ用紙を使ったはずなのに、なぜか印刷の仕上がりが違う…と感じたことはありませんか?
印刷の仕上がり具合は湿度や印刷機の調子などによって微妙に変化しますが、実は紙の使い方を間違っているケースも考えられます。
特に注意したいのが紙の裏表で、正しくセットしないときれいに印刷できない事があります。
今回は知っているようで知らない紙の裏表の基礎知識についてまとめてみました。
紙にも裏表がある!コピーや対外文書には注意
一見両面とも同じように見えますが、実は紙にも裏と表が存在します。
単に文字を書くだけならどちらを使っても大差ありませんが、表と裏では見た目や質感、適性が異なります。
そのため、コピー用紙として使ったり、対外文書として使用したりする場合は紙の裏表にも注意を払わなければなりません。
裏と表が存在している理由は紙の製造工程にある
紙に裏表が生じる最大の理由は、紙の製造工程においてワイヤーとよばれる網を使って水平方向にパルプと水を流している事です。
一般的な長網抄紙機の場合、紙料を水に分散させて希釈した後、ワイヤーに載せて脱水しています。
このとき、微細繊維や裏抜け防止のために配合される填料(クレー)がワイヤーを通して抜けていくため、ワイヤーに接している面は網の跡(ワイヤーマーク)が残って凹凸が出来やすくなるのです。
見た目も粗く、印刷適性も低いため、こちらが紙の裏面になります。
一方、ワイヤーに接していない方は流出の影響を受けにくいため、平滑性が高く、なめらかな状態に仕上がります。こちらが紙の表面になります。
では、実際に印刷などに使用すると紙の表と裏にはそれぞれどんな違いが生まれるのでしょうか?
裏の特徴は平滑性に乏しく紙詰まりしやすいこと
微細繊維やクレーの流出による影響を受けやすい裏面は凹凸が多くなりますが、そのぶんインキが浸透しやすく、印刷濃度は表より高くなります。
また、クレーは配合率が高くなるほど紙の表面強度が低下すると言われているため、クレーが抜けやすい裏面の方が表面強度はアップします。
ただ、平滑性に乏しい裏面を使用すると、コピー機や印刷機を使った時に紙詰まりが発生しやすくなります。場合によっては故障につながる可能性もありますので、コピー機や印刷機で紙の裏に印刷するのは避けた方がよいでしょう。
表の特徴はシャープな印字を再現でき紙詰まりを起こしにくいこと
ワイヤーの影響を受けにくい表面は凹凸が少ないぶん、きれいな見た目に仕上がります。
また、紙の表には微細繊維やトレーの他、紙の吸水性を制御するサイズ剤が多量に残っています。サイズ剤には水性インクのにじみを防止するはたらきがあるため、表に印刷した方がシャープな印字を再現できます。
表面がなめらかで紙詰まりも起こしにくいので、コピー機や印刷機には表面をセットするのが基本です。
紙の裏と表を見分ける5つの方法
紙の裏表はぱっと見ただけで判断するのは難しいですが、以下の方法を使えば簡単に見分ける事ができます。
方法1. 紙を水平方向から見る
紙を水平に持ち、目の高さまで持ち上げて表と裏を同時に観察できるようにします。
この時、長方形などのワイヤーマークが見えた方が裏面です。
方法2. 1円玉をこすりつける
紙の両面を1円玉でこすると、すり跡の濃度に差が出ます。
クレーを多く含む方がすり跡が濃く出るので、表面だとわかります。
方法3. 紙を注意深く触ってみる
紙を触ってみると、片方はツルツルして、反対側はざらざらしているのがわかります。
凹凸が少なく、なめらかな方が表面です。
方法4. カールの状態をチェックする
一般的に紙は指定の大きさにカットする際、表面を上にした状態で刃を上から下に押し入れます。
そのため、束にした時に表面が上になっていると断面は丸くなりますが、裏面が上になっているとやや反り返った状態になります。
方法5. インクで文字を書いてみる
表面には水分を調整するサイズ剤が多く含まれているため、インクで文字を書いてもあまりにじみません。
逆に裏面はサイズ剤が流出してあまり残っていないので、文字のにじみ具合を比較すれば表裏を判別する事ができます。
印刷やコピーには紙の表面を使うのがおすすめ
印刷機やコピー機に用紙をセットする際、紙の裏表を意識するという人は実はそれほど多くありません。
しかし、凹凸の多い裏面に印刷するときれいに印刷できませんし、場合によっては紙詰まりを引き起こす原因となります。
近頃はツインワイヤーの採用で裏表の質に大きな差はなくなりつつありますが、よりきれいに印刷したい時や、トラブルを避けたい場合は印刷機にセットする前に紙の裏表を確認することをおすすめします。